法人での生命保険契約、加入前に目的意識と出口の再確認を!

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法人での生命保険契約。
節税目的のみで契約すると、後々頭を悩ませることになりますよ。

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保険に加入する目的、きちんと認識していますか?

法人での生命保険契約、みなさんどの様な目的で加入を検討されていらっしゃいますか?
会社が好調で利益が出てくると、保険外交員の営業や知りあいからの紹介により、節税目的の保険契約を検討する方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

保険というものは将来の不安に備えるために、少額の保険料を支払うことにより、万が一の場面に備えるために加入するものです。
生命保険に限らず、自動車保険、火災保険、地震保険、損害保険・・・etc、全て万が一があったときに慌てないように、急な負担の発生に対応できるように保険に加入します。

例えば、購入したばかりの車が盗難にあったり、事故に遭遇したときに、新たな車を準備できる資金を確保できたり、また事故にあった車の修理代金が補てんできたり、万が一の時に保険は活躍してくれます。
ですから、そもそも万が一の不安がないのであれば、保険に加入する必要はありません。

しかしながら、実際のところ会社の業績が良く、法人税等の負担が大きくなってくると、どこからともなく節税のための保険契約の話が降って沸いてきます。
社長自身が、将来の不安等を全く予期していない中で加入してしまう保険、ちょっとおかしいですよね。

年払いで500万、1,000万・・・、金銭感覚が麻痺してしまっているのか、相当に税金アレルギーが強いのか、多額の保険にすぐさま加入してしまうケースを見受けます。

法人で保険に加入するような時には、何のために保険に加入するのか、その目的を今一度考えてみましょう。節税目的というのは、本来の目的ではありません。
そして実際に節税ができていればいいんですが、そうではないケースが非常に多いのです。

節税しているつもり、でも、出口が来ないと完結しないのです

法人での節税商品として、全損(支払った保険料が全て経費になるもの)になるもの、半損(支払った保険料の1/2が経費、1/2が積立金になるもの)のもの、などがあります。
長期平準定期保険、逓増定期保険、がん保険などの種類があります。

節税するためには利益を下げる必要があるわけですが、これらの保険で経費になる部分が多ければ多いほど利益は少なくなるため、利益(所得)に対してかかってくる法人税等の負担が少なくなります。

例えば、利益(所得)が2,000万出ている会社(社長45歳)が年払い1,000万円の全損の保険に加入したとしましょう。法人税等の実効税率を35%とした場合、節税額は下記のとおりです。

・節税額
1,000万円×35%=350万円

確かに税金は安くなります。
ただ、キャッシュアウトの金額は、当然ですが保険に加入した方が大きくなります。

・保険に加入しなかった場合のキャッシュアウト
2,000万円×35%=700万円(税負担)

・保険に加入した場合のキャッシュアウト
1,000万円+1,000万円×35%=1,350万円(保険料負担+税負担)

普通に納税するよりも、キャッシュアウトを増大させてまで保険料を支払うのは、将来のいつの日か解約返戻金が返ってくるからです。

では、解約する場合に何が気になるでしょう?
それは解約返戻率ではないでしょうか。加入した当初は返戻率が30%程度のものが、年々返戻率が上昇(80%程度でしょうか)していき、そしてまたピークを境に下降していきます。
返ってくるお金、高いほうがいいに決まっていますので、解約返戻率の高いタイミングで解約を検討することになるでしょう。

では、解約返戻金をマックスで受け取ったときはどうなるのでしょうか?
先の例で10年後に返戻率が80%になったものと仮定して、計算してみましょう。

・解約返戻金
1,000万円×10年×80%=8,000万円

・解約返戻金にかかる税金
8,000万円×35%=2,800万円

解約した時には、その解約返戻金は雑収入として利益を構成します。
ということは、必然的に税負担が発生します。
これが、いわゆる保険による節税は課税の繰延で、10年間節税(毎年350万円)しているように見えますが、将来に繰り延べているだけということになります。

もちろん、この様な状況を回避するために、解約と同時に大きな経費を作る必要がありますが、一番メジャーなのが役員の退職金です。いわゆる将来の役員退職金の積み立ての目的で、保険料を支払っておくということです。

例えば、上の例で社長が退職し、退職金を8,000万円支払えば、解約返戻金8,000万円は消えますので、出口においての税負担はないことになります。

しかしながら、そう簡単に退職金8,000万円支払えるのでしょうか?
役員退職金は税務上、過大なものは経費として認められません。
その退職する役員の報酬月額、勤務年数、功績倍率などをつかって、税務上の適正額を意識しておかなければなりません。

加えて、解約返戻金の率が高いところが、本当に社長が退職するタイミングで良いのでしょうか?今回の例では契約時が45歳、10年後の解約時はまだ55歳です。まだまだ現役バリバリの時期に本当に社長が退任できるでしょうか?

加入する段階で、ある程度のシミュレーションを行っておかないと、慌てることになるのは火を見るより明らかです。

目的意識を持ち、上手に活用する必要があるのが保険

この様に、目的意識もなく、今現在利益が出ている⇒節税という行動を取ってしまうと、想像以上に後々困ってくるのが保険です。また、上記の例では利益が10年間変わらず発生しているという状況ですが、実際問題、そううまくいくわけではありません。

時には赤字に転落する場合もあるでしょう。赤字になった時はもともと法人税負担はありませんので、せっかく支払った保険料は節税効果すら発現しません。資金繰りの厳しい時に、節税効果のない保険料を支払わなければなりません。

もちろん、赤字になり資金がショートした時に、保険を解約をすれば、赤字と解約返戻金を相殺してなんとか節税効果を発現できます。しかし、これはあくまで仕方なくの形であって、本来の想定とは異なります。解約返戻率は低い可能性が高いので、会社に入ってくるキャッシュは少ないでしょう。得をするつもりで加入した生命保険。フタを開けてみれば、得どころか損をしてしまっているケースも多々あるのです。

生命保険というのは、契約期間が長いものです。キャッシュアウトも積もり積もればかなり大きな金額になり、会社の財務基盤にも大きな影響を与えます。
そして、将来は誰にも分りません。常に不確実な要素が絡み合います。予定通りに行かないことも想定しなければなりません。

もちろん、代表者に万が一のことが起きてしまった場合など、保険金が会社を救った現場も見てきています。保険にはメリットがあります。しかしデメリットもあることを忘れてはいけません。

その中で、法人で生命保険を上手く活用するためには、やはり保険に加入する目的が何なのかを明確にしておくことです。明確になっていれば、必ず出口がどうなるかのシミュレーションを行うはずです。明確になっていないのであれば、契約する時期ではないとういうことです。
節税目的の保険契約、注意してくださいね。

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【編集後記】
個人(プライベート)であれ、法人であれ、保険は大きな買い物です。
様々な不安を軽減してくれるのが保険、せっかくですから有り難い思いを抱けるよう、
自分自身に必要な保険に加入してほしいと思います。

【昨日の一日一新】
・ニシカワの黒糖パン

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