上場株式等の譲渡所得、年末までに損益通算・繰越控除での節税が可能か検討してみよう。

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上場株式等をお持ちの個人の皆さま。
譲渡利益が出ている方も譲渡損失が出ている方も、
節税のために年内にできることを検討してみましょう。

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過去のマイナスの繰り越しは3年間が限度。期限切れになる前に利益を確定させよう。

上場株式等の譲渡損失は、確定申告することにより翌年以後に繰り越すことができます。
この繰り越した損失、期限がありまして3年間を超えるとなくなってしまいます。

3年間の猶予があるので、繰り越しているうちに何年分の損失がいくらあったか、うっかり忘れてしまったりはしていませんか?
確定申告書を確認すればすぐ分かるのですが、正直、確定申告書は申告前にしか見ないという方も多いでしょう。

しかし、繰り越しの期限が年内で到来するかも知れません。
今年は平成28年ですので、3年前の平成25年の損失が期限を向かえることになります。
期限切れにならないためにも、平成28年中に譲渡益を確定させることにより、繰り越した
損失との相殺により節税を行いたいものです。

また、期限の猶予がある平成26年分、平成27年分の繰越損失がある場合も、当然今年に利益を確定させることによって、節税が可能です。
評価益が出ており、更なる上昇を期待している銘柄があったとしても、年内に一度売却し利益を確定させることによって、繰越損失の早期活用、価格の下落リスクに対処することが可能です。

利益を確定させた後、再度価格が下落した時にその銘柄を買い戻せば、より有利な選択を行ったことになります(同日に売却と買い戻しを行った場合には、単価の付け替え計算により実現損益が変化しますので、注意してください)。

過年度の繰越損失がなくても、本年度での損益通算が可能であれば損益を実現してみよう。

過年度に繰越損失がない場合は、今年度で損益通算ができないか検討してみましょう。

現時点で確定の利益が出ている場合は、通常、特定口座の源泉徴収選択口座が大半でしょうから、既に税金が源泉徴収されています。
特定口座であれば、このまま何もしなければ確定申告不要で課税関係が完結します。

しかし、評価損の出ている銘柄をお持ちであれば、売却して損失を顕在化することによって、
前述の利益と相殺することにより、源泉徴収されていた税金が還付されます。

損失を確定することは本意ではないかも知れませんが、売却をした後にタイミングをみて
同じ銘柄を買い戻すことは可能です。課税関係が完結すれば、源泉徴収された税金は戻って
きませんので、年内の売却を検討してみましょう。

一方、現時点で確定した損失がある場合には、確定申告を行うことにより損失の繰り越しが可能です。ただし、確定申告をする手間がかかりますし、繰り越していたことを忘れてしまうことも考えられます。

もし、評価益が出ている銘柄をお持ちであれば、安全策として譲渡益を確定させるのも一つの手です。”利食い千人力”とも言いますし、損失の範囲内であれば税金がかかることなく課税関係が完結します。

なお、共通の注意点としては、株式取引の引き渡し日が約定日より起算して4営業日であることです。平成28年度の課税対象とするには、平成28年12月27日約定分までとなります。
12月30日の最終日、大納会の日の約定では平成29年度の課税対象となりますので、注意が必要です。

年末は何かとバタバタする時期です。
今のうちに現状を把握しておき、損益通算・繰越控除を生かすためにどう動けばいいのか、早めに検討してみることをおススメします。

法人はクロス取引は認められず。売却した株式等の買戻しには注意しましょう。

クロス取引とは、ある銘柄について、同一数量・同一価格の注文を同時に発注し、約定させる取引をいいます。証券会社が大口の注文を執行するために、取引所の立会外取引として行われます。

簡単に言うと、同じ価格で売りと買いが発生しますので、損益が認識されるにもかかわらず、
有価証券の所在は結果として変わらないということになります。
よって、大口の注文の執行にかかわらず、個人や法人の所有する株式を売って(買って)、買って(売って)を同時に行えば、クロス取引と同様な状況になると言えます。

このようなクロス取引は、個人については規制されていません。
ですから、上記の様に損益通算のために売却後、買い戻すという取引を行った場合、
損益を認識しつつも、有価証券の所在が変わらない形を作ることが可能です。

しかしながら、クロス取引は法人では認められていません。
これは金融取引会計基準によっても認められておらず、税務でも法人税法基本通達の規定により認められないことになっています(売買目的有価証券を除きます)。

認められないとはどういうことかというと、その売却損益を認識しないということです。
売却をして損失(利益)が出ているにもかかわらず、すぐに買い戻しており実態に変化がないことから、その損失(利益)はなかったものとされることになります。

利益が出ている法人が、節税のために売買目的以外の有価証券を売却し、損失を顕在化させるような場合、すぐに買い戻してはクロス取引に該当し、その損失は認められません。

売却と購入が同時契約ではなく、売却日から次の購入日が5営業日を超えており、適正な時価取引であり相対取引ではない場合は、クロス取引には該当しないこととなります。

節税のために売却損は発生させたはいいが、その後事情があって買い戻す必要ができてしまった場合など、その買い戻すタイミング、数量等十分注意をして取引を行うようにしましょう。

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【編集後記】
リーマンショックの頃は、譲渡損失を繰り越してもなかなか利益が出ず、
使えずじまいといったもったいない事例をよく目にしていました。
ここ数年はアベノミクスの影響か、日経平均が上昇基調だったこともあり、
利益が出ているものが目につきます。
繰越損失の期限がなければ、このようにあわてて損益を確定する必要もないのですが。。。
ルールですので致し方ありませんが、不利にならないように活用したいものです。

【昨日の一日一新】
・QBBプレミアムベビーチーズ ゴルゴンゾーラ入り

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